令和4年度年越し護摩祈祷を開催しました

12月24日(土)東大寺不動堂をお借りして、恒例の年越し護摩祈祷を開催させて頂きました。たくさんのお申し込みとご参列をいただき、心より御礼申し上げます。

一年を象徴する漢字が、今年は「戦」と決まりました。言うまでもなく、ロシアによるウクライナ侵攻が、今年の最も重大な出来事といえるでしょう。SNSを通じて発信されるリアルな戦争の現実に戦慄を覚えます。「世界史とは戦争の歴史である」という言葉もあるように、古今東西戦争が絶えることはありません。そして実は釈尊にも、同じような経験がありました。

コーサラ国という強大な国の隣にある小さな小さな釈迦国、それが釈尊の故国でした。コーサラ国の軍が釈迦国に進撃を始めたことを耳にした釈尊は、国境の街道におもむき、一本の枯れ木の下で座禅を始めました。「世尊よ、青々と茂った木ではなく、なぜ枯れ木の下でお座りになっているのですか」と尋ねるコーサラ国王に、釈尊は答えました。「たとえ枯れ木でも、故郷の木の陰は涼しいのです」

釈尊を尊敬していたコーサラ国王は、「出家者に出会ったら兵は引き返せ」という言い伝えを思い出し、撤退を決めました。それ以後もコーサラ国王は二度釈迦国に攻め入り、そのたびに釈尊は樹下に座りました。が、三度目には釈尊の姿はありません。コーサラ国はついに釈迦国を征服し、滅ぼしてしまいました。

愛する故国を救うため、三度試みを重ねた釈尊。しかし四度目にはすべてを受け入れることを選び、最後まで武器を手に争うことはありませんでした。

この時、釈尊が守り抜いたものとは、なんだったのでしょうか。

 

すべての者は 暴力におびえ すべての者は 死を恐れる 己が身にひきくらべて

殺してはならぬ 殺さしめてはならぬ すべての生きものにとって 生命は愛おしい

己が身にひきくらべて 殺してはならぬ 殺さしめてはならぬ

 

これは法句経に説かれた一節です。人間のみならず、動物や鳥や虫たちすべての生きものが暴力におびえ、自分の命を愛おしく思っています。ならば、自分の生命が脅かされることを望まないように、他の生命を脅かしてはなりません。不殺生を説く仏教の非暴力主義は、かくもシンプルな教えを原点としています。そして戦いの渦中にある今だからこそ、釈尊がそうしたように私たちもまた、この戒めを心にしっかりと留め置かなくてはならない。私はそう思うのです。

本年もブログを御覧いただき有り難うございました。来年こそは災難が息む年となるように祈念して本年の締めくくりとさせていただきます。みなさまどうぞ良いお年をお迎えください。

合掌