歌集「平城山の風に」

先日、一冊の歌集をいただきました。
作者は英保志郎さん。
朝日新聞の歌壇選者もされているので、紙面でお名前をご存知の方もいらっしゃることでしょう。
この英保さん、実は私にとって大変ありがたい方なのです。
5年前の9月に開苑した天平墓苑ですが、8月末のある日、いの一番にお問合せの電話をくださった方が、英保さんでした。
その英保さんが今秋、新たに歌集「平城山の風に」を出版されたとのこと。
早速拝見すると、日常のさまざまな表情を切り取った歌の中に「墓地を購ふ」と題した十首を収めてくださっていました。

いくつかを紹介させていただきます。

天平と いふ語に寧楽びと 弱いはず 名づけられしは 「天平墓苑」

どんな名にしようかと思案していた頃、犬の散歩中にふと思いついたのが、この名前でした。寧楽びとの心をくすぐるネーミングとして「これだ」と即決したのですが、このように詠んでいただき、なんともおもはゆい気持ちです。

 

墓友なる ことばも知りぬ 墓地購ひし 者ら集めて 「和顔施」の会

みづからの 骨の納まる 場所を得て 人は穏しき 笑みに集えり

コロナ以前は、「和顔施」という集まりを折々にもっていました。
初対面の方ばかりでも和やかな場になったのは、いずれ同じ墓に眠る仲間同士、という安心感からくるものだったのでしょう。
一日も早く、皆さまとまたお会いしたいと願っています。

 

見晴らしの よさがウリですと 住職の 勧むる墓地の 意外に安し

思わず私も笑ってしまった、秀逸の一首。
そうなんです。天平墓苑は決して高くないんです。
どうぞ一度、すばらしい景観を確かめに足をお運びください。

 

 

他にも多彩なテーマで詠まれた歌が数々並び、まさに書名のとおり、寧楽にそよぐ風のような味わいの一冊でした。
ことばひとつひとつを大切に紡ぐ、ということにあらためて思いを致しています。
最後になりましたが、英保志郎さん、本当にありがとうございました。

 

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