仏教では、私たちが神仏のご加護をえて、願いを成就することができるのは、三つの力によると教えられています。すなわち、以我功徳力(いがくどくりき)、如来加持力(にょらいかじりき)、及以法界力(ぎゅういほうかいりき)の三力です。自分の功徳力、仏様の加持力、そして宇宙に遍満する法界力、この三つの力がそれぞれに作用し、融合して、ひとつの物事が成就するというわけです。

卑近な例で恐縮ですが、縁談を例に挙げてみましょう。結婚したいという自分(以我功徳力)がいるとしても、相手(如来加持力)がいなければなりません。相手がいるとしても、この二人の出会いがなければ、縁談が成就することはありません。つまり縁談の成就には、自分(以我功徳力)と相手(如来加持力)そして、二人を引き合わせる仲人(及以法界力)の存在が必要となります。なにごとであれ、物事が成就するには三つの力が陰ながら働いていると考えるのが、仏教の考えです。昔から日本人はこの陰の力に感謝をこめ、「お陰様」という言葉で表現してきました。ところが現代人は、なにごとも自らの力のみで成し遂げられると信じ込み、謙虚さを忘れ、陰の力の存在すら意識していないように思います。

また、自らの功徳力のありようも大変重要です。弘法大師空海のお言葉に、「菩薩の用心は、みな慈悲をもって本(もとい)とし利他をもって先とす」とあります。伝教大師最澄は、慈悲の最上のあり方を、「忘己利他」(もうこりた)という言葉で示しています。いずれも、自分をかえりみず、他者の幸せのために尽力することが、慈悲の本来の姿であるという意味であり、そうすることで、私たちは無量の功徳力を積むことができるのです。大日経というお経には、「方便を究竟となす」と説かれています。方便、つまり眼前の人々の苦悩を取り除く実践こそが、自他共に幸せに至る究極の仏道とされています。言うは易く行うは難し。これらの実行は容易ではありませんが、自ら語り心にとどめることで、年頭の自戒といたしましょう。