東大寺総合文化サンターで開催されている「南正文作品展 よろこびの種を」に足を運びました。南正文さんは両手がない日本画家です。小学校3年生のときに、お父さんが経営する木工所で、機械のベルトに巻き込まれて両腕を切断する事故にあいました。中学校2年のとき、日本のマザー・テレサと言われた口筆画家、大石順教尼に出会ってその最後の弟子となり、口に筆をくわえて毛筆や日本画の制作に取り組みます。

以来、展覧会に入選入賞をくりかえし、日本画家としての地位を確立。絵画制作のかたわら、全国の少年院や刑務所を訪れての講演、タイの里親制度にたいする支援、ネパールでの小学校建設など活躍は多方面にわたります。2012年12月に61歳で永眠。約900点の絵画が残されました。

南正文さんの日本画を拝見してその美しさに感動しました。細部まで丹念に描かれた細かい表現。色合いの濃淡や光と影。月並みな感想ですが、とても口に筆を加えて描かれたとは思えません。印象的だったのは作品全体に共通する透明感。両手がないことのハンデを克服して到達した精神の高みを見るようです。その精進はいかばかりだったでしょうか。

重い障害をもつ南さんが最後に到達されたのは「禍福一如」という境地。災いも幸せも表裏一体で、心の持ちようでいかようにも転じるというのは、まさに仏教の教えです。

やさしい人柄がそのまま表現されたような南さんの日本画の展覧会とともに、南さんの半生を描いた映画も上映中です。芸術作品は作家の魂そのもの。南さんの世界に触れにぜひお越しください。生きる希望と元気が湧いてきます。開催は10月4日(金)午後2時まで。

場所 奈良市雑司町406-1 東大寺総合文化センター(東大寺内)

日時 9月28日(土)午前10時 ~ 10月4日(火)午後2時まで