東大寺年賀の儀に出席しました
明けましておめでとうございます。
今日起きると池に薄氷がはり、外の水道も凍っていました。今日はこの冬一番の寒さです。
例年、1月4日は東大寺本坊に管長猊下のお年賀に出向きます。出席者はそう多くはないのですが、近くの東大寺の末寺がほぼ出席しています。一人ずつ管長猊下と面談して年賀の挨拶と近況報告。その後には食膳を前にして、東大寺内局の皆様と懇談会です。明るく暖房のよく効いた広い部屋に笑い声が響きます。正座が許せば何時まででも長居したい気分です。
東大寺の境内は観光客で溢れています。特に目につくのは、やはり中国人の観光客。来ている服の色と髪の毛で、だいだい見分けが付くようになりました。中国では赤い色が尊ばれているようで、特に着衣や持ち物に独特の赤い色が使われています。真紅ではなく桃色がかった深紅色です。日本の服飾にはあまり用いられない色なのですぐに見分けが付きます。
髪の毛を染めている人は殆どいません。男性は刈り上げの短髪が多く、メガネも大分前に流行ったような黒縁の大きめのものが目立ちます。また、知人によると、旅行にいつ来るかで貧富の差がわかるとか。2月の春節期は旅行費用が上がるので、裕福な階層しか海外旅行はできないのです。
寒い2月はお客さんが少なく、多くの中国人観光客が訪れてくれて奈良は大助かりなのです。
参道を挟んで東大寺の本坊の向かい側に、東大寺総合文化センターがあります。その地下で写真家の篠山紀信展が開催されていました。私は昔から写真が趣味で、飛鳥路などをよく撮り歩きました。とくに憧れを抱いていたのが、大和路の写真家である入江泰吉と篠山紀信です。
入江泰吉は大和路をホームグラウンドとした典型的な風景写真家で、風景写真は足で撮るという格言どおり、イメージ通りの景色になるまで同じ場所に何回も通い、絵に描いたような美しい写真をものにしました。
一方、篠山紀信は、目の前にあるものを自分の感性で切り取り、大衆の前に投げ出すというスタイルです。耕す入江と刈り取る篠山の違いと言えるでしょうか。大和路の風景は、入江泰吉の写真で一応の完成は見ていたので、篠山紀信がどのように表現するのか興味を持っていました。
展示の中で、一枚だけ入江泰吉が撮らないであろう写真を見つけました。東大寺開山堂の名椿、糊こぼしとおぼしき枯れかけた椿と変色した椿のアップです。入江泰吉ならこれは撮らない。現実を切りとって大衆の前に投げ出す篠山の真骨頂で、感傷や情緒とは無縁の描写。モノ(被写体)が勝手に喋りだすような実にすごみのある写真です。