大黒日記その5 ゲーム気分で♪
もうかれこれ10年ほどになるだろうか。
10月の声と同時に、私の中でひっそりとひとつ、スタートベルが鳴る。
これから3ヶ月に及ぶ、長い長いマラソンの始まり。
今はその真っただ中にいる。
元来、私は掃除が苦手。
そのくせ、「理想はモデルルームのような家」という、かなり困った性分だ。
だから年末大掃除のシーズンが近づくと、いつもいつも憂鬱だった。
家中をピカピカにリセットして、新しい年を迎えたい。
でも、不得手な掃除をひたすらやり続ける数日間なんて、私にはあまりに酷。辛すぎる。
急な仕事が入ったりすると、逃げ場を与えられたようで正直ホッとしていた。
そこである時、一計を案じた。
彼岸の忙しさも落ち着いた10月から、毎日ちょっとずつやっていったらどうだろう。
いつもの掃除に加えて、普段手が回らない箇所の掃除を3ヶ月かけてやる。これならもう少し気楽にできるかもしれない、と。
まず、年内に完了しておきたいところを書き出して、リストを作る。
この時、ザックリとした書き方ではなく、できるだけ細かな項目に分けて書くのがポイント。
忙しい日は引き出しひとつだってかまわないし、気分が乗らない時は5分でもOK。
途中で棄権しないよう、あくまでルールはゆる~くゆるく。
そしてひとつ完了する毎に、リストに☺マークを添えていく。
このマークが4つ、5つと増えていくと、無機的なリストの表情が楽しげに変わり、なんだかうれしくなってくる。
「さて、今日はどれにしようかな~」
カフェでケーキを選ぶように、リストを眺める自分がいる。
12月を過ぎる頃ともなると、早々と手をつけた箇所には、新たな汚れが乗っかっていることも。が、そこはあえて見て見ぬふり。
やった、ということが大事なのだから、スルーしてしまおう。
また年が明けて、気が向いた時にやればいい。
ゆるいルールとはいえ、ゴールを目指しているからには後戻りはしない。少しずつでも前進あるのみだ。
そして今年も早いもので、持ち時間の3分の1が過ぎた。
せっせと☺マークを集めている毎日は、マラソンというよりはゲームを楽しんでいる感覚なのかもしれない。
現在のところはまあまあ順調だけれど、これからどう進むかはわからない。
わからないのがゲームだし、わからないからドキドキもする。
大晦日には、リストが☺マークで全て埋まっていたらうれしい。
満ち足りた気持ちで年越しそばを啜っていられたら最高。
でも結果はどうあれ、完走できたらそれがいちばんハッピー。そう思う。
それに、そんなことにはお構いなしに、どっちにしたって新しい年はやってくるのだ。
たとえば窓ガラスの一枚や二枚、拭き残したところで、そこから眺める景色はさほど変わりはしない。風景から彩りを奪うのは、ガラスのくもりよりはむしろ、心のくもりなのだから。
私は大晦日のゴールまで、ゆっくりのんびりゲーム気分で行こう。
爪楊枝に割り箸に使い古しの歯ブラシ。
これら愛用の道具たちを手に、気のむくままにちまちまと。
「そうそう、神は細部に宿るって言うからね~」などと、今日もひとりつぶやきながら。