「東京の街にはあたらしいものはなんでもある。でも、千年後に残っているものってなんなのでしょう。」

東京から奈良にいらした若い方々が、こう口にされていたそうです。案内をしたという知人が話してくれました。

奈良には高層ビルがありません。

新幹線も通っていません。

県庁所在地に映画館がないのは奈良だけ、と聞いたこともあります。

が、気づきさえすればあたりまえのように、千年前からの風景がそこここに広がっています。

先人が築き、脈々と受け継がれてきた歴史や文化や原風景が、奈良という宝箱にぎっしりとつまっているのです。

「安心」、これはもともと仏教用語で「あんじん」と読みます。

不安から解き放たれ、心やすらかに生きていくこと。

今ほどこんな境地が求められている時代はないかもしれません。

またこんな時代だからこそ、移ろうことなく在り続けるものが語りかける言葉もあるはずです。

私は奈良の寺に生まれ育つ仏縁をいただきました。

「ふるさと」が持つちからに千二百年の祈りを添えて、ここでみなさまにやすらぎを感じていただけるよう微力を尽くしてまいりたいと思っております。

ゆったりとした奈良時間を味わいに、どうぞお越しくださいませ。

合掌

空海寺住職  森川隆行