もうかれこれ10年ほどになるだろうか。

10月の声と同時に、私の中でひっそりとひとつ、スタートベルが鳴る。

これから3ヶ月に及ぶ、長い長いマラソンの始まり。

今はその真っただ中にいる。

 

元来、私は掃除が苦手。

そのくせ、「理想はモデルルームのような家」という、かなり困った性分だ。

だから年末大掃除のシーズンが近づくと、いつもいつも憂鬱だった。

家中をピカピカにリセットして、新しい年を迎えたい。

でも、不得手な掃除をひたすらやり続ける数日間なんて、私にはあまりに酷。辛すぎる。

急な仕事が入ったりすると、逃げ場を与えられたようで正直ホッとしていた。

そこである時、一計を案じた。

彼岸の忙しさも落ち着いた10月から、毎日ちょっとずつやっていったらどうだろう。

いつもの掃除に加えて、普段手が回らない箇所の掃除を3ヶ月かけてやる。これならもう少し気楽にできるかもしれない、と。

 

まず、年内に完了しておきたいところを書き出して、リストを作る。

この時、ザックリとした書き方ではなく、できるだけ細かな項目に分けて書くのがポイント。

忙しい日は引き出しひとつだってかまわないし、気分が乗らない時は5分でもOK。

途中で棄権しないよう、あくまでルールはゆる~くゆるく。

そしてひとつ完了する毎に、リストに☺マークを添えていく。

このマークが4つ、5つと増えていくと、無機的なリストの表情が楽しげに変わり、なんだかうれしくなってくる。

「さて、今日はどれにしようかな~」

カフェでケーキを選ぶように、リストを眺める自分がいる。

 

12月を過ぎる頃ともなると、早々と手をつけた箇所には、新たな汚れが乗っかっていることも。が、そこはあえて見て見ぬふり。

やった、ということが大事なのだから、スルーしてしまおう。

また年が明けて、気が向いた時にやればいい。

ゆるいルールとはいえ、ゴールを目指しているからには後戻りはしない。少しずつでも前進あるのみだ。

 

そして今年も早いもので、持ち時間の3分の1が過ぎた。

せっせと☺マークを集めている毎日は、マラソンというよりはゲームを楽しんでいる感覚なのかもしれない。

現在のところはまあまあ順調だけれど、これからどう進むかはわからない。

わからないのがゲームだし、わからないからドキドキもする。

大晦日には、リストが☺マークで全て埋まっていたらうれしい。

満ち足りた気持ちで年越しそばを啜っていられたら最高。

でも結果はどうあれ、完走できたらそれがいちばんハッピー。そう思う。

それに、そんなことにはお構いなしに、どっちにしたって新しい年はやってくるのだ。

たとえば窓ガラスの一枚や二枚、拭き残したところで、そこから眺める景色はさほど変わりはしない。風景から彩りを奪うのは、ガラスのくもりよりはむしろ、心のくもりなのだから。

 

 

私は大晦日のゴールまで、ゆっくりのんびりゲーム気分で行こう。

爪楊枝に割り箸に使い古しの歯ブラシ。

これら愛用の道具たちを手に、気のむくままにちまちまと。

「そうそう、神は細部に宿るって言うからね~」などと、今日もひとりつぶやきながら。